妊娠中の抗うつ剤は単純に避けるべきではない!その理由は。。。

ある日、1人の女性が『お薬相談室』に来ました。

 

生理がこなので産婦人科を受診しました。妊娠2か月だそうです。。。
妊娠に気づかず「うつ」の薬をのんでしまっていたんです。大丈夫ですか?


 

それはセンシティブな問題ですね。これからさまざまな決断の場面があるとおもいます。
『使える』『使えない』ではなく、正しい知識を持つことが重要かもしれません。


 

 

抗うつ剤は胎盤を通過して胎児に影響を与える

まず、情報を整理しますね。

 

現在、妊娠妊娠5週目で、絶対過敏期です。

 

この時期は、赤ちゃんのさまざまの器官、特に中枢神経や心臓、眼など重量な器官が造られ始める時期です。

 

なので、原則薬剤の使用は避けるべき時期ですね。

 

でも一方で、妊娠中に抗うつ剤を中断することは症状が悪化したり、落ち着いていたうつ状態が再び出てくることがあります。

 

特に、妊娠中は不安やストレスが生じやすため、抗うつ剤を中断した妊婦と、継続した妊婦にくらべうつ症状が5倍増加するとの報告(*1)があります。

 

また、妊娠中にうつ病のある場合は早産や低体重児の出産がおおいそうです(*2)

 

このように妊娠中に「抗うつ剤」を服用することは重症化を防ぎ、早産・低体重児出産のリスクを下げることにはなります。

 

しかしもう一つ大きな問題があrます。それは「抗うつ剤」が胎盤をよく通過することにあります。

 

パロキセチン(パキシル)は先天性異常に影響をあたえます

妊娠中の抗うつ剤投与で多く調査されているのが「パロキセチン」です。

 

その調査によると、
パロキセチンを第1三半期(数え月で3.5か月、満13週)に使用した場合、使用したかった場合にくらべ、形成異常はオッズで1.23、先天性の心疾患で1.28とパロキセチンとの因果関係があるという結果になった。

 

具体的にいいますと、
通常100人に対し3~5人の先天性奇形のリスクがあるところ、パロキセチンを服用すると3.7~6.2人になる可能性があるということです。

 

抗うつ薬を服用した人から生まれた赤ちゃんにはどんな症状がでるんだろう

それでも産みたいという気もちはあるでしょうから、先ほどの「先天的」なリスク以外にどんなリスクがあるか知っておくことも必要なことだとおもいます。

 

抗うつ剤の服用と新生児適応症候群(PNAS)につて解説します。

 

PNASは胎盤を通過した抗うつ薬の影響で新生児にさまざまな症状がでます。

  • 振戦(手足が震える)
  • 嗜眠(しみん:ものすごい深い眠り)
  • 筋肉の異常緊張または脱力
  • 睡眠障害
  • 無・多呼吸
  • 下痢・嘔吐
  • 哺乳低下(乳を飲まないまたはのめない)
  • ケイレン

 

これは、2つのことが考えられます。

  1. 赤ちゃんはお腹の中で『抗うつ剤』の影響を受けています。ところが分娩により薬剤の影響を急に受けなくなるので”離脱症状”がでます。
  2. 赤ちゃんはお腹の中で『抗うつ薬』を飲んでいるのと同じため「抗うつ作用」そのものの作用がでます。

 

このような状態を『新生児離脱症候群』といいます。

 

この状態は48時間以内がピークになるためかなりの注意が必要になります(医療機関側が慎重な監視をします)。

 

まとめ

妊娠期間中の「抗うつ薬」の服用は「使えるか」「使えないか」という単純なもんだいではないようです。

 

このため、今後さまざまな場面で”決断”をしなければならないことが予想されます。

 

決断には前提として「知識」が必要となります。少しでもこの記事が役立つなら幸いです。

 

質問などありましたら「問い合わせ」してください。

 

(*1)Cohen LS, et al. : Relapse of Major Depressin During Pregnancy in Women Who Maintain or Discontinue Antidepressant Treatment JAMA,295(5):499-507,2006
(*2)Grote NK, et al.:Ameta-analysis of depression during pregnancy and the risk of preterm birth, low birth weight, and intrauterine growth restriction. Arch Gen Psychiatry,67(10) : 1012-1024,2010

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