【母乳育児】私が飲んだ「抗うつ薬」は赤ちゃんに影響しますか?

ある日、1人の女性が『お薬相談室』に来ました。

 

赤ちゃんの健診で。。。やっと病院にこれました。。。
本当は外出したくなかったんです。気分がすぐれなくて。。。
先生に『産後うつ』じゃないかって。。。「うつ」の薬が処方されました。

 

こんな状態だけど「母乳育児」はつづけたいんです!
「うつ」の薬大丈夫ですか?


 

そんな状態で病院まで。。。
がんばりましたね。

 

「うつの薬」は母乳に入りますので、赤ちゃんは少量ながら「うつの薬」は飲んでしまします。


 

その量って、赤ちゃんは大丈夫なんですか?


 

実は、「母乳からどれくらいの量を飲んでも大丈夫か」の判断基準はないんです。

 

ですが、「抗うつ薬を服用している母乳をのんだ赤ちゃんに問題が起きた」という報告はないです。

 

むしろ問題なのは、「産後のうつの影響で、ママが授乳や子育てに積極的にかかわろうとしなくなっちゃう方が、赤ちゃんへの影響の方が大きい」という報告はあります。

 

なので、ママの「うつ」対策を優先したほうがいいですね。

 

詳しくはこのあとに解説します。


 

 

授乳中のママの『抗うつ剤』について

産後うつのママイラスト.

産後うつは赤ちゃんに影響すると報告があります。下痢が多くなったり発育が遅かったりと。それはママの育児に対する意欲の低下や情緒的な働きかけが減少するためと言われています。だからママの精神的安定は大切な事なんですね。

 

とはいえ、育児は想像以上大変なこと。1人では解決できないですよね。だから心理的サポートを受けつつ薬の治療も行うことが大事です。実は『産後うつの治療』は赤ちゃんの発育だけでなくママの育児不安や赤ちゃんとの絆作りのためにも必要とされています。

 

それでも授乳中のママは薬が母乳に入ったら赤ちゃんに影響するのではないかと心配ですよね。
授乳中のママに非常に多く使われる抗うつ剤に『パロキセチン』があります。

 

さっそく抗うつ剤『パロキセチン』の母乳の中の量を確認しましょう。

 

赤ちゃんは母乳からどれくらいの『抗うつ剤』を母乳からを飲んじゃうの?

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ママの飲んだ『抗うつ剤』を赤ちゃんがどれくらい母乳から飲んじゃうか?さっそく計算してみましょう。

 

【抗うつ剤】『パロキセチン』の摂取量を計算します

では、赤ちゃんがどれくらい『パロキセチン』する量を計算します。

  1. 『パロキセチン』は脂溶性なので、確かに母乳にはいりますが、
  2. ママの血液から母乳にはほとんど入りません(M/P 比0.056~1.3)。
  3. 赤ちゃんが母乳からのむ『パロキセチン』の量(RID)は1.2~2.8%です。

この数値から赤ちゃんが母乳から飲む『パロキセチン』量を計算しますね。

 

でも実は、抗うつ薬は症状により使う量に大きく差があるため、非常に難しい判断になります。まず初めにモデルケースとして”1日最大量の40㎎のパロキセチンを飲んだ”とし、その後で治療の必要性と安全性を解説していきます。

 

では初めに摂取量の計算から。ママの体重50kg、赤ちゃんの体重8kgとします。
ママが飲んだ薬が母乳にはいり、その母乳から赤ちゃが飲む『パロキセチン』の量は0.08~0.18㎎(=40㎎/50kg×1.2∼2.8%×8kg)になります。

 

計算から授乳による赤ちゃんの摂取量が出ました。かなり少ないです。でも残念ながら、この量が多いか少ないかは判断できません。先ほども書きましたが、うつ治療に使用する薬の量と治療の長さは個人差が大きいためです。なにより乳児への”これなら安全な量”が決まっていないんです。

 

でも、『パロキセチン』をのみながら母乳育児しているママと赤ちゃんとの関係を調べた研究はたくさんありますので、それらを参考に安全性と母乳育児の必要生を考えたいと思います。

 

産後うつ治療の必要性を解説

母乳育児するママイラスト

産後のママの9%が『うつ状態』になるという報告が厚生労働省の「健やか親子21」(*1)で報告されています。ママの精神状態が赤ちゃんへの発育に大きな影響を与えることを考えると「産後うつ」の治療は必要といえます。

 

一方、授乳と産後うつの発現関係を調べた研究によると(*2)、母乳育児をしているママは『産後うつ』になりにくいという結果があります。これは生理的観点からも正しいです。

 

赤ちゃんが母乳を吸う刺激はママの脳から『オキシトシン』を分泌させます。オキシトシンは産後の不安を減少させ安らぎを与えるホルモンです。このオキシトシンの恩恵からママの精神状態は安定し、赤ちゃんとの愛情と社会的な絆作りが促進します。その結果、ママの育児に対する前向きな考え方や愛情行動が強くなるわけです。

 

うつの治療薬『パロキセチン』の安全性をズバッと解説

母乳育児するママイラスト2

授乳中のママのうつ治療には心理的サポートと薬物治療がありますが、今回は『パロキセチン』の薬物治療面での安全性についての調査結果を解説します。

 

『パロキセチン』の薬としての特徴ですが、脂溶性のため母乳への移行は認められます。薬の説明書によると1%程度が母乳に入ると記載されていますが、実際、”検出できない”との研究結果もあります。

 

また、授乳期に『パロキセチン』を毎日平均20.7㎎飲んでいるママから母乳育児を受けた赤ちゃんの発育状態を調べた研究によると、赤ちゃんの体重には影響がなかったとの報告があります。

 

これらの結果からパロキセチンを服用しながらの母乳育児は可能であるといえそうです。
*1)厚生労働省 「健やか親子21」(最終閲覧日2018年8月8日)
http://rhino.med.yamanashi.ac.jp/sukoyaka/pdf/saisyuuhyouka4.pdf
*2)Figueiredo B . et al : Breastfeeding is negatively affected by prenatal depression and reduces postpartum depression. Psychological Medicine.44(5).927-936,2014

 

『パロキセチン』のデータ載せますので参考にしてください。

薬品名 パロキセチン
分子量 375
投与経路 内服
分配係数 3.38「[脂溶性]
酸塩基性 塩基性(pKa 9.9)
たんぱく質結合率 93~95%
代謝活性 なし
半減期 14.35時間
M/P 比 0.056~1.3
RID 1.2~2.8%

半減期:飲んだ薬が半分の量になるまでにかかる時間のことです。身体への影響の長さをみるデータです。
M/P比(milk/plasma ratio):薬の母乳への移行を比較するための指標です。数値が大きいほど母乳移行率が大きいことになります。
RID(relative infant dose):授乳による乳児の摂取率の指標です。これはママの飲んだ薬を赤ちゃんがどれくらい母乳から摂取するかを比較する数値です。やはり数値が大きいほど赤っちゃんへの影響が大きくなります。RIDは10%以下で安全といわれています。

 

まとめ

女性と赤ちゃん安心感005

産後うつは9%のママが経験すること。『うつ』は「産後疲れ」や「育児疲れ」とは違います。赤ちゃんのために必要なことができない。また、それを気にして「眠れない」「食べれない」ということがあったら、迷わず専門医を受診してください!私のサイトに問い合わせもOKです。一人では悩まないでくださいね。

 


 

 

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