【シリーズ|別室へどうぞ】「心のこだわり」が強すぎると生活が苦しいよね

【シリーズ|別室へどうぞ】「心のこだわり」が強すぎると生活が苦しいよね

波の画像

こんにちは『まっさん』です。
 
あなたは何かにこだわりをもっていますか?
例えば、
「ブランド物しか身に着けない」
「お酒は熱燗(あつかん)」
「お風呂は右足から入る」
「目玉焼きにはソース」
などなど。。。
 
こだわり」はその人の個性ですからアイデンティティの1つといえるでしょう。だから、「こだわり」を持つことはとてもいいことです。また、信仰や信条など「心のこだわり」は社会生活をおくる中ではなくてはならない重要なことでもあります。言い換えれば「プライド」をもって生きていくことは、その人の行動への責任や精神の安定には欠かせない要素といえます。
 
ところが、ちょっとしたことで「心のこだわり」が過度になり日常生活に支障をきたすことがあります。「こだわり」が強すぎてるあまり、そのことに過度に集中してしまう。その集中度が過剰になりそれをしなければ不安になる。
 それが自分でも「異常」とわかっていても、そのことをしないわけにはいかない。。。それをしないと不安で不安でどうしようもない。。。そういう状態は日常生活を苦しくします。今回はいくつか事例をみながら「こだわりの強さ」と治療の関係をつらつら書いています。

 

 「不安」に立ち向かう

仕事でも生活でも「心にこだわり」をもつことはプラスにはたらきます。それは、人に流されることなく自分で自分の人生を歩むためにはなくてはならないことです。
人に振り回されると「くたくた」になりますよね?「もうヤダ!」とおもっても人に流されやすい人は、なかなかその状況から抜け出せません。一方で、自分に信条(プライドやこだわり)がある人は他人の意見や行動に左右されず、自分の信条に従って考え、自信をもって行動できます。このように「心のこだわり」は社会生活をおくるなかでとても重要なことなんです。
 
ところが、この「心のこだわり」があまりに強すぎると社会生活に支障がでます。ちょっとしたきっかけで、どんどん「こだわり」が強くなり、仕事や生活に問題がでるほど、そのことにこだわってしまう。
 
これから、私がお会いした3人の方の体験を紹介します。いずれも、「強いこだわり」「強い思い込み」が日常生活を困難にしています。

 

【例1 キレイ好きの潔癖症】
〈症状に至るまで〉
キレイ好きな主婦Aさん、ある日テレビで「トイレ掃除」の特集を何となくみていた。
【Aさん】
『へ~、こうやれば効率よくトイレ掃除できるんだ。。。』
【テレビ】
『トイレのこの部分が特に注意が必要です。実際、ここには目に見えませんがバイ菌がいっぱいいます。ほら!どうです!こんなにも菌がウヨウヨしてるんです』
 
Aさんにとっては「ばい菌」がウヨウヨしている衝撃な映像でした。。。


便座にばい菌がついている
【トイレとばい菌】見えないはずの細菌が見えてしまっている!

 
これをきっかけに、Aさんはトイレ掃除ができなくなってしまいます。それどころか便座に座ることもできず、手袋を2重にしてアルコール消毒・便座シートをかけて排泄をするようになりました。
 
Aさんにとって特に悩ませたのは外出先でのトイレです。最近のトイレはアルコ―ル消毒用のジェルや便座シートなど設置している場所が多くなってきましたが、全然知らない人が使用した後の便座に触れることは恐怖そのものでした。そのうち外出先ではトイレを我慢するようになり、それが精神的負担となって、Aさんは徐々に外出自体をしなくなってしまいます。
 
外出できないくなったAさんは誰にも相談できず症状はさらに悪化します。トイレ、ゴミ(特に生ごみ)や蛇口、ドアノブ、スイッチなどあらゆるところにバイ菌がいるように思え、さわるたびに過剰な手洗いをするようになります。
  自分が納得するまでは「手洗い」は続きます。。。自分が「納得」できると一時は不安から解消され手洗いは終了しますが、時間がたつと手に『細菌』がついているように感じ「手がもぞもぞ」します。そして過剰な手洗いが再び始まります。
 
これを繰り返すうちに、何もさわっていなくてもバイ菌が手についていると思い込み、手洗いを繰り返します。この段階になるとAさんにとっては 何かを触ったかどうかは問題ではありません。「手を洗わないといけない」とう「心のこだわり」がそのような行動をとらせているからです。
〈対処法〉
見えないものへの恐怖は「頭の中で作られた恐怖」です。そのため、本人が感じている対象(Aさんの場合は『ばい菌』)が、Aさんに対して「何も害がないんだ」と納得しなければ症状は軽減しません。それどころか、目に見えない分、強迫感は強まることが予想されます。
幸いにして、人は誰しもこの恐怖感に打ち勝つ能力を持っています。それは「慣れ」です。「慣れ」は人がもつ心の能力の中でも最大の能力の1つではないでしょうか。あなたがつらい状況にいても、ある期間その状況に置かれると以前より心が楽になったという経験はありませんか。それが「慣れる」とう人の心の能力の1つです。一般的には、「免疫がついたよ」なんて表現されますね。
 
Aさんには典型的な「強迫症状」が出ています。『ばい菌』が無害であると本人が納得することが症状克服のカギとなります。では、Aさんにはどのようにバイ菌に『慣れて』もらうかみていきましょう。
 Aさんが「納得」するためには、Aさんは『ばい菌』と接触することが必要になります。それも何度も接触しなくてはなりません。その苦痛状況に長い期間接触することで、『ばい菌』に対して「慣れ」いきます。

  • 「ドアのぶにさわったけど何も起こらなかった」
  • 「ゴミにさわったけど大丈夫だった」
  • 「便座に座ることができた」

など日常にある物が特別汚い物ではないとうことを認識しながら、徐々に成功体験を重ねることが「納得感」につながっていきます。
 しかし、本人が恐怖と感じていることに向き合うことは、かなりの「心的エネルギー」を消費します。自分から「苦痛」に向かうとうことが、どんなに苦しいことか容易に想像できるでしょう。さらに、強迫症状は自覚できる症状です。「きついことやってるなぁ」と感じながら治療をつづけています。だから、治療そのものがかなりの心的エネルギーを消耗させています。
 
そのため、恐怖対象に立ち向かう人の中には「うつ」「不安」を感じる人も少なくないです。嫌なものにさわるのさえ気持ちが落ち込むのに、さらに『治療という目的』で、それにさわらなければならないのですから、かなりの心的負担になります。それがいわゆる、「2次的うつ」です。このような人たちの「心的不安」が少しでも軽減できるように、抗うつ剤が使用されるケースが多いです。 
 
強迫症状で苦しんでいる人に、「そんなもん全然怖くないぞ~」といっても恐怖対象に向き合うことはできません。なぜなら、すでに「心的エネルギー」が消耗している可能性が高いからです。まずは、「うつ」「不安」に対して立ち向かえるだけの心的エネルギー(その気やヤル気)を蓄えてから、症状克服に向けてスタートを切るべきでしょう。

 

【例2 錠剤をのめない人の拒食症】
<症状にいたるまで>
錠剤(粒状のお薬)を飲めない大人の方は結構いますよね。私も何人かお会いしたことがあります。その理由のほとんどが幼少期に薬をのどにつまらせたことが原因のようです。今回はそのような方のの中でも特に思い込みが強い方(Bさん)のお話をしようと思います。
 
Bさんは胃の調子がわるく食欲がないということで来院されました。通常、食欲がないのであれば内科や消化器科などを受診されるはずですが、Bさんは何故か心療科を受診されました。
薬の内容は食欲を改善する薬と一緒に抗うつ剤も処方されいました。うつ状態で食欲がないなど、特に内容は珍しくありません。ただ全て粉状にするようにとの記載があります。これ自体もよくある話です。ただ一つ気になったのが「粒が残っていないか本人の前で必ず確認すること」と記載があった点です。
 
もちろん、「粉状にして」と記載があれば、きちんと粉状にします。さらに粒が残ってないか確認することは当たり前なことです。しかし、「必ず本人の目の前で」という指示はめったにありません。
「なんでだろう?」と思い別室で、Bさんに話を聴くことにしました。すると、Bさんは幼少期にのどに薬を詰まらせたことがあるとのことでした。それ以来錠剤が飲めなくなったというのです。
『な~んだ』と不謹慎にも心のなかで思ってしまいました。よくある話だからです。ところがBさんの話には続きがありました。
大人になったBさんは相変わらず粉状の薬しか飲めなかったんですが、特にそれ以外は生活に問題はありませんでした。ところがある日、胃カメラの検査をすることに。Bさんは検査の説明を聞いているうちにだんだんと「のどに違和感」を感じ始めました。それでもなんとか我慢して説明を聞いていると突然、激しい呼吸困難となり説明は中断。後日、再説明となりました。
 
おそらく、幼少期の錠剤事件が本人にとっては心的ストレスとなって今回の症状となったのだとスタッフは思い、次回はより丁寧な説明が必要だと考えたそうです。
 
Bさんへの再説明の日。スタッフはあらかじめ食道のレントゲン胃カメラのサンプルを用意していました。一般的に、食道の直径は20~30㎜、胃カメラの直径は5~6㎜です。それをみせて検査が安全であることを丁寧に説明しましたが、Bさんは結局、検査を受けなかったそうです。
 
その話をきいて、私は「胃部不快感による食思不振なのか?」とも考えましたが。。。

では、なぜ心療科を受診しているんだろ。。。
『まだ何かありそうだ!』
と思い、さらにもう1歩踏み込んで話を聴いてみました。。。
「あなたはなぜここに?」と。。。


 
すると意外な事実が。実は「食事が怖いんです」と言うではありませんか。『えっ?食事が怖い?』それもあの食道のレントゲンをみてからかしいのです。
胃カメラ検査の不安をなくそうと用意してくれた食道のレントゲンを見たとき、自分が考えていた以上に「食道がせまい」と思ったそうです。それ以来、薬どころか、固形物も怖くて食べれなくなったそうです。そう「拒食症」だったのです。
<対処法>
このケースでは栄養管理を行う必要がありますが、ダイエットなどのような「食べない」という拒食ではなく、「食べたいけど食べられない」という拒食なため対処比較的容易ではないかと。さいわい現在は液体の高カロリー栄養やゼリー状の流動食がどこでも手に入るのでその点は安心です。しかしこのまま流動食を続けるのは顎の筋肉や歯茎の劣化、嚥下障害や胃腸の機能低下を起こす可能性があるため、やはり徐々に固形食を摂取してもらわなければならないでしょう。
恐怖対象へ接触するため「2次的うつ」の予防のため抗うつ剤の投与を続けながら、流動食から介護職(特別に柔らかくした食べ物)などに徐々に固形物への食事に移行していくことになるでしょうね。

 

【例 異臭でドアを閉められない閉所恐怖症】
<症状にいたるまで>
Cさんはまじめな方で、仕事もきちんとこなす方でした。ただ集団で行動するのが苦手でお昼などは車の中で1人で食べていました。また、やや神経質な面もあり、チリ・ホコリや人の咳・クシャミなどに対してとても敏感で、人と接触するときは、常にマスクをしている状態で日常を過ごしていました。
そんなある日、いつののように車内でお昼ご飯をとっていると、「車の中から異臭がする」ことがあったそうです。すぐに車内を清掃したものの、異臭は日に日にひどくなり、最終的には窓を閉めることができなくなりました。
そのため、Cさんは車の走行中はどんなに寒くても窓を閉めずに走行、雨の日さえも窓を全開にして走っているそうです。当然、車内は水浸しです。
まわりの人からは「雨の日に窓全開で走るなんてヤバくない?」と言われるそうですが。。。こういう場合、実は本人もちゃんと(?)ヤバイと感じています。それでも、Cさんは窓を閉めることはできないのです。
そのうちに自宅でも異臭がし始めます。家じゅうの窓を開け、換気扇を24時間回しているそうです。最終的には玄関のドアを閉めているのも嫌になり開けっ放しするようになりました。閉じられた空間に居たくない、ある種「閉所恐怖症」状態だったのみたいです。
ただ、誰かが家に入ってくるのは怖いからといって、今では自宅に帰らず、車中泊するようになったみたいです。神社、空き駐車場、路上といろいろな所で車中泊をしていましたが警察などに注意され、どうしようもなく受診したそうです。
<対象法>
きっけかけは「車の中の異臭」です。実は話を聴いていて初めに思い当たったのが『お昼ご飯を車の中で食べている』という点でした。車中で食事するということは、車の中に飲食物がこぼれたり、カスのついた包装紙が放置されたりしますからね。
Cさんは几帳面な方なので自分ではそんなことはないと思っていますが、本人が気が付かないところで「食べカス」があったのかもしれんせん。その「食べカス絶対にない」との強い思い込みが、原因不明の異臭への恐怖になったのかもしれないと私は考えました(あくまで推測です)。
車の清掃を毎日することで心は落ち着いてきているようです。その結果、玄関ドアはしめることができるようになったみたいです。まだ異臭恐怖はあるようですが薬で治療をしつつ、徐々に「生活臭に慣れ」ていけるといいですね。

 

まとめ

仕事でも生活でも「心のこだわり」をもつことはプラスにはたらきます。それは、人に流されることなく自分で自分の人生を歩むためにはなくてはならないことです。
 
しかしながら、この「心のこだわり」があまりに強すぎると社会生活に支障がでます。「こだわり」が強くなり過ぎると、仕事や生活に問題がおこります。これが「強迫症状」ですね。
 
対処方法としては「暴露反応妨害法」という方法があります。この方法は恐怖や不安の対象に「自ら積極的に接触していく」とうものです。自ら恐怖対象に接触して、「無害」であることを確認するわけですね。
 
とは言え、恐怖対象に積極的に接触していくには「心理的負担」が大きいです。そのため治療自体が原因で「うつ」や「不安」になることや、症状を悪化させるこのもあります。そのリスクを軽減するため医師や専門家のもと、SSRIなどの「抗うつ剤」を使用しながら暴露反応妨害法は進められていくことが多いです。

 

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